庭先や家の中で見かける「エビみたいな虫」、その代表格であるヨコエビや、姿が似ているワラジムシ・ダンゴムシは、見た目から不快害虫として扱われがちです。しかし、彼らは自然界や私たちの生活環境において、実は重要な役割を果たしている側面も持っています。一概に「害虫」と決めつけてしまう前に、彼らの生態と役割について少し考えてみましょう。まず、庭などで見かける陸生のヨコエビやワラジムシ、ダンゴムシは、主に枯れ葉や朽ち木、動物の死骸などの有機物を食べて生活しています。彼らはこれらの有機物を細かく砕き、排泄することで、土壌中の微生物による分解を助ける働きをしています。つまり、彼らは自然界の「分解者」として、物質循環の重要な一翼を担っているのです。彼らの活動によって、土壌はより豊かになり、植物の成長が促されます。もし彼らがいなければ、落ち葉などの分解はもっと遅くなり、土壌環境は悪化してしまうかもしれません。このように、生態系全体で見れば、彼らは紛れもなく「益虫」としての側面を持っているのです。家の中に侵入してきた場合は、見た目の不快感や、アレルギーの原因になる可能性(死骸や糞がアレルゲンとなる場合)もゼロではないため、「不快害虫」とされることもあります。しかし、彼らが直接人間に噛み付いたり、病気を媒介したりするような深刻な「衛生害虫」ではありません。また、ワラジムシなどが稀に農作物を食害することもありますが、その被害は限定的であることが多いです。一方で、彼らが家の中に多く発生するということは、その家に湿気が多い、あるいは有機物のゴミが溜まっているなど、何らかの環境的な問題があることを示唆しているとも言えます。つまり、彼らは家の環境状態を知らせてくれる「指標生物」としての見方もできるのです。もちろん、家の中で大量発生すれば駆除の対象となりますが、庭で見かける程度であれば、むやみに殺虫剤を使うのではなく、彼らが土壌環境に貢献していることを理解した上で、共存の道を探るという視点も大切ではないでしょうか。