夏から秋にかけて活動が活発になるスズメバチは、時に人の生活圏に侵入し、巣を作ったり、威嚇してきたりと、深刻な被害をもたらすことがあります。その対策の一つとして利用されるのが「スズメバチトラップ(捕獲器)」です。これは、スズメバチをおびき寄せて捕獲する装置ですが、なぜ効果を発揮するのでしょうか。その仕組みは、スズメバチの習性と誘引剤、そして容器の構造にあります。まず、スズメバチ、特に働き蜂は、餌となる甘いもの(樹液、花の蜜、熟した果実など)や、幼虫の餌となるタンパク質(昆虫など)を探して飛び回っています。スズメバチトラップの多くは、この食性を利用します。容器の中に入れる誘引液には、酒や酢、砂糖、ジュースなどが使われますが、これらはスズメバチが好む糖分や、発酵によって生じる匂いを含んでいます。特に、発酵臭は樹液などの天然の餌場に似た匂いを放つため、スズメバチを強く引き寄せると考えられています。誘引液の匂いに誘われてトラップに近づいたスズメバチは、容器の入り口から内部へと侵入します。トラップの容器は、多くの場合、一度入ると出にくい構造になっています。例えば、ペットボトルを利用した自作トラップでは、上部に漏斗状の入り口を作り、スズメバチが内部に入った後、壁面を登ってもなかなか出口を見つけられないように工夫されています。市販のトラップも同様に、入り口が特殊な形状になっていたり、内部構造が複雑になっていたりして、脱出を困難にしています。内部に入ったスズメバチは、誘引液に落ちて溺れたり、出られずに衰弱したりして捕獲される、という仕組みです。このように、スズメバチトラップは、蜂の食性や習性を巧みに利用し、誘引・捕獲するように設計されています。ただし、トラップは主に働き蜂を捕獲するものであり、巣そのものを根絶する効果は限定的であることも理解しておく必要があります。